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「家族手当」を見直し「子ども手当」にするべきか


制作:福田 秀樹氏 (特定社会保険労務士/株式会社福田式経営研究所 代表取締役)

「家族手当」を見直し「子ども手当」にするべきか

トヨタ自動車が2016年1月から段階的に家族手当を見直しています。その内容は配偶者手当を廃止する一方、子ども手当を4倍に増額するというものです。また、平成28年8月8日、人事院は国家公務員の配偶者手当を減額見直しするよう、国会と内閣に勧告しました。このような流れで、家族手当を見直そうかという会社は少なくありません。

家族手当は戦前には義務化をされていました。「産めよ、増やせよ」「国力増強」の国家政策の一環です。日本は戦争に負け、奇跡の成長発展を遂げるなか、女性は子どもを産み育てるために家庭に入る、又はパートタイマーで補助的に家庭を支えるという性別による役割分担が固定化し、結果として家族手当はその背景にある税制とあいまって、その性別による役割分担を固定化する一助となったのです。最近は、時代の流れで、政府も家族手当の見直しに関して、以下のような事を提言しています。

男女賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン(抄) 平成22年8月31日


 

(ア)公正・明確・透明な賃金制度

家族手当や住宅手当といった生活手当については、労働者の生活の安定を図るために多くの企業が採用しているが、男女間賃金格差解消の観点からも、また、女性労働者や独身の労働者の労働意欲への影響という観点からも、改めて労使で話し合い、どのような属性の労働者にとっても不公平の生じないよう、必要な見直しを行うことが望ましい。

よく、経営者から少子化対策として配偶者手当を廃止し、その分を子ども手当にするのはどうか、というご意向を戴きます。私も、「なるほど、今日的な意義はあるな」と思って具体的に提案し、進めようとしても、なかなか意思決定されず、進まない事例が多発していいます。実行段階になると、敢えて実施する必要性を感じられないのでしょう。

政府の意見も、配偶者手当を子ども手当に振り替えるのが望ましいとは一言も言っておらず、重点方針は、同一労働同一賃金、正社員と非正社員の待遇格差是正、非正社員の待遇改善です。

手当とは賃金であり、賃金は一度上げると下げることが難しい。一度、就業規則に規定してしまうと、廃止や減額するには、「高度の必要性と合理性」が求められます。

「安心して働ける賃金制度」がないと中小企業の社員から意見されることがあります。でも、それは誰にとっての安心でしょうか。社長からの信認を得て、給与がドンドン上がっている社員はそんな事は言わないのです。

安心して働ける賃金制度の安心とは、社長の方針をしっかりと受け止め、真面目に頑張ってくれる社員にとっての安心であればそれでいい。

経営コンサルタント事業も行っている有名な会社が家族手当を月額5万円ほど出していて、定着率がとてもいいと言っていますが、中小企業でこんな事をすると安心が慢心になります。中小企業も40代以上の定着率は良いのです。お金がかかる、40代、50代でもっと給与が欲しければ、幹部になるべく努力する、社長の方針に従い、自らの役割の中で懸命な努力を重ねる。会社はその道筋はしっかりと示す賃金制度は必要。

いま、中小企業で求められているのは、求人に有効な若手のベースアップであり、コンプラ違反にならないための残業代支払いであり、上昇志向を持ってもらうための役職者の待遇改善であり、60歳以上の今まで一律に下げていた給与の見直しなのです。

このような緊急かつ重要な賃金分配政策にすべて手を打った後に、かつ賞与を年間4カ月分を継続して払える付加価値構造になった後に、福利厚生政策として、「子ども手当」を議論し、導入されれば良いでしょう。

強い会社になるための労務政策の中心と本質を見失ってはいけません。

私の意見は、現状の家族手当は、政府がしっかりとした所得税の配偶者控除等の見直し策を提示するまでそのままにしておくことです。

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