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電力自由化により広がるデマンドレスポンス事業

「楽天経済圏」が展開するデマンドレスポンス事業


制作:廣瀬 鉄之介(エネルギー・環境ジャーナリスト)

広がるデマンドレスポンス事業

デマンドレスポンスと言う言葉をお聞きになった方も多いと思います。電力需要家が、電力会社の要請で、一定の時間、節電をする。それに対して電力会社が一定の対価を支払うと言うビジネスです。こうしたデマンドレスポンスビジネスは、4月からの電力小売の全面自由化実施によって、電力会社だけでなく、一般企業の間でも広がることが予想されます。デマンドレスポンスビジネスのメリットやその意義などを探ってみました。

電力会社と需要家が直接情報をやり取り


デマンドレスポンスは、直訳すれば「需要応答」ということですが、これではピンときません。電力自由化でこの言葉が使われるのは、電気事業者と、一般消費者などの電力需要家との間で直接情報のやりとりをして電気の消費をコントロールするところに大きな目的があります。関西電力がこの冬、実施中のデマンドレスポンスサービスを中心に具体的な方法を見ていきます。

関西電力のケース


関西電力は平成27年12月1日から、電力需給のひっ迫が予想される場合に、一般家庭の電力使用を控えてもらう取組の一環として「みる電 あったかECOプロジェクト」を実施しています。このプロジェクトは、同社の無料web会員のお客様に、パソコンや携帯電話、スマートフォンなどで節電お願いのメールとあわせ、特典クーポンを送り、そのクーポンを持って、協力会社のレストランやお店で買い物をしてもらう、という仕組みです。つまり、電力需給のひっ迫が予想される時間帯に、お客様に外出してもらい、家庭での暖房エアコンなどの家電製品の利用を控えてもらうというわけです。
web会員は、同社のwebサイト「はぴe見る電」(電気ご使用量お知らせ照会サービス)で、会員IDとパスワードを入力して会員登録された方です。自宅の電気代や使用量をチェックできるほか、節電・省エネに役立つさまざまなシミュレーションや情報を見ることができます。

このプロジェクトでは、電力需給のひっ迫が予想される前日の18時を目途に、WEB会員宛に、節電のお願いメールを発信します。クーポンの使用時間帯は、電力需給のひっ迫時間帯に合わせてあります。昨年冬の場合、当日の17時~20時とされていましたが、今冬は9時から21時に大幅に広げました。消費者の利便を考慮するとともに、協力企業も昨年冬の約600店舗から約1100店舗に拡大し、商品購入やレストラン、映画の割引など、得点の対象も広げています。メールを受信した会員は、同社管内にある協力企業の店舗などでクーポンの提示をすれば、特典を受けることができます。

デマンドレスポンスサービスは、文字通り、電力の需要家に節電をお願いし、対価を支払うと言うサービスですが、こうしたサービスが登場したのも、電力の自由化により、従来の大手電力会社による一方的な供給調節だけで、電力需給のバランスを維持することが困難になってきたからです。電力事業への新規参入者である新電力の場合、供給設備を所有しないところも多く、需給バランスの維持は、需要家の節電に頼る度合いが大きくなっているからです。

アグリゲーターが介在するケースも


関西電力のケースは、電力会社が消費者に直接節電をお願いするケースですが、最近良く見られるのは、電力会社と需要家との間にアグリゲーターと呼ばれる仲介事業者が介在し、デマンドレスポンスをひとつのビジネスとして展開するケースです。

アグリゲーターとは、直訳すれば、収穫者、集荷人などとなりますが、電力ビジネスで使われる場合、電力需要家から、節電量を集め、まとめて電力会社に売却し、対価を得る事業者のことを言います。インターネットサービス会社の楽天がデマンドレスポンス事業を始めており、同社の例から、デマンドレスポンス及びアグリゲーターの事業を紹介します。

楽天は3地域でビジネスを展開


楽天の場合、現在、東京電力管内、関西電力管内、九州電力管内の3地域でデマンドレスポンス事業を行っています。直接アグリゲーターとなるのは、同社グループの楽天エナジーです。楽天は、インターネットによるショッピングモールや通販などのほか、トラベルやレストレン、レジャー施設などの予約など、幅広いインターネットサービス事業を展開しています。これらの事業は「楽天経済圏」とも呼ばれ、インターネット上では、非常に大きな経済市場を構築しています。この市場に参加する企業や店舗の数は膨大な数と思われます。

たとえば、楽天トラベル。楽天の運営する旅行予約サイトですが、このサイトには、国内のホテル、旅館、レジャー施設など、多くの施設が加盟しています。実は、これらの施設では、多くの電力を使用しています。そのため、節電による電力消費の削減は、施設の運営コスト引き下げにとって不可欠の要素となります。楽天は、この点に着目し、楽天エナジーを通じて、デマンドレスポンス事業を展開することになったものです。

デマンドレスポンスによって、各施設すなわちホテルやレストレンなどのクライアントが、一定の節電量を達成すると、楽天エナジーから報奨金をもらえます。この報奨金は、楽天エナジーがデマンドレスポンス契約を結んでいる東京電力や関西電力、九州電力から得ることができ、その一部がクライアントに還元される仕組みです。

まとめ


電力会社にとって、節電は、新規の設備を作って発電しなくても良いという点で、設備コスト削減効果をもたらします。その削減効果をアグリゲーターを通じて需要家に還元できれば、電力会社、アグリゲーター、需要家の3者に利益をもたらすことができるのです。
自由化の中で登場するさまざまな電力ビジネス。その新しいビジネスのひとつとして、アグリゲーター事業やデマンドレスポンス事業が、今後大幅に増える見通しです。

■著者■ 
廣瀬 鉄之介
エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。

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